前回はフジッコが世間をにぎわしたをききました。『リッチモ』の「つくった話」を聞きました。
なんでも「カスピ海ヨーグルト」のルーツとは健康研究者が、世界を旅して見つけた伝説めいたヨーグルトであり、それがフジッコに持ち込まれ製品化し2000年初頭の日本にブームが巻き起こったんですって。
時代はくだり、「カスピ海ヨーグルト」から派生をしたリッチなヨーグルト『リッチモ』が大ヒット。今回は開発に7年かかったという『まるごとSOYカスピ海ヨーグルト』の話…あれ、地味じゃないですか? 大豆? とか思ってたんですけど、これものすごいインパクトあるんですよ。
それは和のおかずとしてのヨーグルトが現れたんです!つくった話きいてから食べると味が変わっておもしろいんですけど、急いでる方は試食部分だけでもごらんください!
きいた人:大北栄人
つくった(側の)人:フジッコ株式会社ヨーグルト・デザート事業部の敷田加寿美さん
母がひそかに酒粕を入れていた
──
これですよね。実は今日フジッコに取材に行くんだと言ったら、実家の母が冷蔵庫からこれを出してきて「あんた、私フジッコさんのファンなんよ」と。回し者だったんです、驚きました(笑)。わざわざ探して買ってるらしいんですよ。
神戸のフジッコ本社にて敷田さんにお話をききました。
──
母は酒粕を入れて一晩置いたものを食べるらしくて、見せてくれて。流行りとかでもなく自分で考えたらしいんです。酒粕が好きだからという理由で。そんなのあるんですか?
敷田:
へえ~甘酒ではなくて酒粕なんですね。酒粕はまだ試したことないですね。
──
大豆のヨーグルトって珍しいですよね。豆乳ヨーグルトってことですか?
敷田:
いえ、豆乳にする前の丸ごとの大豆ですね。豆乳は作る過程でおから部分が取り除かれてしまいますよね。2020年に最初に出したときは「まるごと大豆のヨーグルト」だったんですけど、「カスピ海ヨーグルト」の菌を使ってリニューアルしたんです。
──
豆乳作るとおからってめちゃくちゃ出るんですよね。それが全部入ってるんですか。
敷田:
はい、全部入ってます。それで「まるごと」。※うす皮のみ取り除いています。
──
え~、じゃ、めっちゃ体によさそう…すいません、体に良いものファンになってきてまして(笑)。これっておから部分は細かくしてるんですか?
敷田:
はい、何回も細かく細かくしていって、滑らかにして、粉感(こなかん)も感じない舌触りになってます。
これは豆乳ではなくおから部分もまるごと入ってるらしい
酒粕入りヨーグルト。たしかにおいしいのだが、酒粕でなくてもいいような…。「酒粕に合わせるヨーグルトならこれだ」という意味はわかる。
家森さんも言う、とにかく大豆食えと
──
そっか~、ほんとにそのまま大豆を細かくして入れてるんですね。ヨーグルトコーナーに大豆が鎮座しているみたいな。おもしろいですね。なんで大豆のを出そうと思ったんですか?
敷田:
フジッコは昔から煮豆ですとか豆製品を作ってきたんです。それがだんだん世の中の生活のスタイルが多様化して、食生活も変わってきました。すると毎食毎食、主食の他にメインのおかずと煮豆と…揃えていくのは難しいときも出てきてますよね。
でもこの大豆というもの自体が、本当に理想的な食品なんですよね※。もう毎食摂りつづけていただきたい、時間がない中でもお手軽にちょっと足していただきたい、ということで。
※取材後に「カスピ海ヨーグルト」のルーツとなったヨーグルトを持ち帰った研究者・家森さんの本を読んでみたら、長寿の地域をいろいろ見たが大豆がいいよと書いてあった(あと青魚)。それが「カスピ海ヨーグルト」であるなら「これぞ家森さんの本質」みたいな商品である。
──
あーなるほど、今は「一汁一菜でええんですよ」が拍手で迎えられたような時代ですよね。朝なんか眠いからパン1枚食べて出るような状況が多いです。
敷田:
パン食はまさに。ご飯だったら納豆を召し上がられたりしますけど。
──
大豆が「まるごと」だとさらにいいことあるんですかね?
敷田:
栄養面において、豆はもう丸ごととっていただくのが一番で、特に食物繊維ですね。食物繊維はおからに多く含まれるんですけれど、乳酸菌と食物繊維って一緒に摂ると相乗効果があるんです。
──
あ~、調べたことあります! 乳酸菌のエサになるんですよね。
腸活のためにヨーグルトを食べるなら
まるごと大豆はうってつけ
敷田:
そうですね。栄養まるごとと乳酸菌という点を考えると、やっぱり食物繊維を取り除いてしまうのはもったいない。そして「まるごと」にこだわった結果……だいぶ開発に時間がかかってしまいました。
──
ははは(笑)それが7年は「もう、なかったことにしよう」となりそうな期間ですね(笑)。なにが問題になるんですか? おからのつぶつぶが残るね、とか?
──
「この匂いは大豆っぽすぎるな〜」と格闘する7年間ですね。どうやって解決するんですか?
敷田:
これがちょっと秘密にしておきたい細かい工夫の連続なんです。使う大豆の種類だったり乳酸菌との相性だったり。発酵の加減も合わせると組み合わせも膨大になるんですけど、それをずっと試していくんですよ。
──
気が滅入りそうな作業…乳酸菌も変えるわけですか。
敷田:
最初に発売したとき「カスピ海ヨーグルト」でなかったのはクレモリス菌FC株でうまく商品が作れなかったんです。大豆と「カスピ海ヨーグルト」の菌との発酵の相性が最初はあまり良くなかったんですがそこもうまくいきました。
大豆の香りがうまい具合に残っているのは、
はてしない組み合わせの結果
和スイーツとしてのヨーグルト登場
──
今日試食させてもらうんですけど、いくつかありますね。これは食べ方がちがう?
敷田:
今日は①そのままのものと弊社の②『おまめさん ゆであずき』という商品を合わせたもの。あともう1つが③「冷奴風」として持ってきました。
──
ええー!? おもしろい! いや、これは絶対自分では思いつかないとこですよ。最高。来てよかったです。そのままのものからいただきます。ハチミツですかね。
敷田:
ヨーグルトの召し上がり方では、そのままとか、ハチミツかけて召し上がるという方が多いですね。また、プレーンの「カスピ海ヨーグルト」とは食感もちょっと違ってます。
──
……うん、おいしいです。話聞いた後だと「これか!」と感じますね。たしかに風味が、大豆っぽい感じはちゃんとあるけど。わかります。嫌な感じではない。すご。あずきもいってみたいですね。
敷田:
ちょっと和菓子というか、和スイーツ風っていうイメージですね。
──
あ~、合う! なるほど! そっかそっか、きなこも大豆ですもんね。ああいうイメージなんですね。こういう味は和菓子でよく出会いますよ。それにヨーグルトらしさがベースにある。きなこヨーグルトも食べた記憶があるし。
敷田:
大豆なのできなことか黒蜜とか和のものが合いますね。お母様が酒粕を合わせてくださっていたのも、もしかしたらそういった面からかもしれません。
『まるごとSOY(略)』は和の食材にぴったりハマる
フジッコといえばの『おまめさん ゆであずき』トッピング
──
僕は豆乳そこそこ飲むので多少慣れてるんですけど、これは美味しいですね。和菓子ヨーグルトだ。そしてヨーグルトといってもあんまり酸っぱくないですね。
敷田:
酸味の少なさのバランスはこだわってつくりましたね。
敷田:
大豆が酸っぱいと…なんて言いますか異質なもののような印象があるんです。酸っぱい大豆食品って広く流通してる食品ではそもそもあまりなかったりするんです。
──
たしかに(笑)酸っぱい豆腐は危なそうなイメージが。いや、これはでもヨーグルトとして美味しいですね。それで面白い。なんか新しいんだけど、豆腐とかきな粉とかでよく知ってる味というおもしろさがあります。
敷田:
大豆をデザートとしても摂れるというのはお客様からもご好評をいただいているところです。お食事の中でも、気軽にデザート感覚でも大豆の栄養が摂れるところをよく言及していただいてますね。
──
あー、そっか。デザートとして豆腐食べないですよね。甘い豆乳はあるからそんな違和感ないですが。で、最後に冷やっこみたいなやつですよね。
大豆をデザートにしたい…という
考えたこともない夢を叶えたければこれだ!
激震!とろっとする大豆は高級な和食だ…!
敷田:
醤油でもいいんですけれど今日はめんつゆと天かすとおねぎで。
──
おもしろ…!! 食べてみます……うーわ! すご。ええっ!? 美味しいです。ええ…?? いや、これ美味しいですね。すんなり美味しい!
敷田:
ちょっととろっとした湯葉みたいと言っていただくこともあったりしますね。
──
うわ~! それだ。そして他の食べ物に結びついた瞬間に、一気にこう、食べやすくなるというか、道が拓けた感じがしますね(笑)。でかい安心が乗っかったような。いや、びっくり。
敷田:
いろんなバリエーションの食べ方をしていただけると、より楽しく、飽きずに召し上がっていただけるかなと考えまして。
──
いや、おもしろいです。これさっき言われた「大豆なのにデザートになる」の逆ですけど、「ヨーグルトなのにおかずになる」んですね。う〜わ、すご。違和感ないですね。「湯葉みたいです」って言われるとすごい面白い。ヨーグルトなのに。一気に視界変わりました。美味しい。いや、これは…食べ物として全然違うものですね。
敷田:
酸っぱいとトッピングと喧嘩もしてしまうかなと思うんですが、酸味をできるだけ抑えているのでお馴染みが良くなるかなと。
──
そうですよね、そしてこんなとろとろのものは和食では珍しいですね。
敷田:
そうですね、おぼろ豆腐とか柔らかいものってちょっと高級なイメージがありますよね。
──
あ〜あ〜、そうだ、京都ですよ。このヨーグルト全体が京都。我々はなぜか京都に弱いんですよ。ヨーグルト買ってきて急に京都になるのいいですね(笑)。
湯葉のように食べられるヨーグルトであり、
なんとなく京都に行った感じがある
敷田:
日常の食事の中でちょっとした自分の中のお楽しみになっていただけるといいなと思いまして。実際にめんつゆをかけて召し上がってる方もいらっしゃるんです。
敷田:
そもそものヨーグルト自体もお料理に使われる方もいらっしゃいますよね。調味料として使っていただいたり。
──
そっか、世界ではヨーグルトってよく料理として扱われますよね。とろっとしてるし、食材としてもおもしろい。敷田さんはこれだと好きな食べ方とかあるんですか。
敷田:
今お出ししたものも好きなんですけど。『まるごとSOYカスピ海ヨーグルト』では醤油とわさびとアボカドで。
敷田:
洋バージョンでしたら、醤油とわさびをオリーブオイルと塩コショウに変えるとクリームチーズみたいな感覚にもなりますし。
敷田:
トッピングするものでも全く新しい美味しさが楽しめるのでいろいろ試していただけるといいと思います。
──
しょっぱいヨーグルトはもうだれもやってないですから。我々の舌がブルーオーシャンというか、試しがいがある、試したい。これ大豆だからなじみのある味で入りやすいんですよね。
担当者おすすめは醤油とわさびとアボカド
もしくはオリーブオイルと塩コショウとアボカド
なぜ大豆でも「カスピ海ヨーグルト」にするのか?
──
大豆って牛乳と全然別物なのに、牛乳みたいにヨーグルトになるのが不思議なんですが。
敷田:
そうですね。タンパク質量はそんなに大差ないですが豆乳は脂肪分や糖質が少ないんです。この「糖の少なさ」が発酵において一番難しいところですね。
──
ああ、発酵って糖分をエサに増えていくことが多いんですよね。
敷田:
はい。乳酸菌の餌となる糖ですね。牛乳の場合は乳糖(にゅうとう)があるのでスムーズに発酵できるんですけれど、大豆には乳糖がないんです。
──
まさか大豆にという、カスピ海の乳酸菌からしたらびっくりするような引越しですが、「カスピ海ヨーグルト」の方がやっぱりいいんですか?
敷田:
クレモリス菌FC株を使うことで、酸味がまろやかになるのと、食感の滑らかさも他の菌を使うのとは全然違うんですね。なのでなんとかこれもクレモリス菌FC株で「カスピ海ヨーグルト」として出したい…っていうのが思いとしてありまして。
──
そんな思いが……言い方難しいですけど、私たちの全く知らなかった思いがあるものですね。
──
発売から3年経ってもまだあるってことは売上も成功したんですね。
敷田:
そうですね、菌が変わったリニューアルをきっかけにして手に取っていただける方もすごく増えて。
──
たしかヨーグルトにしてはちょっとお高いんですよね?
「体がよろこぶ美味しさ」これか!
──
『リッチモ』みたいに味を追求ということではなく健康をアピールしたような?
敷田:
『リッチモ』は美味しそうさが先行しますけど、こちらはウェイトで言うと健康ですかね。美味しく健康にというのを目指しておりますが、お客様が召し上がる最初の目的としては「健康」なんじゃないかと。
敷田:
脂質やコレステロールを気にされてたりですとか、女性の方でイソフラボンを摂りたいと思われてる方ですとか、そういった方に特に手に取っていただいてます。
──
他のヨーグルトも健康的なこといろんなこと書いてるし選び方がよくわからなくなってくるんですよね。「カスピ海ヨーグルト」も効用という面でもなにかあるんですよね。
敷田:
このクレモリス菌FC株に関してずっと機能性研究は続けてまして、パッケージには書いてないんですけど、論文や学会で発表も行っているんです。
敷田:
乳酸菌は菌によっていろんな機能があるんですけれど、食べ続けるかどうかは体感で選ばれる方が多いように思いますね。メーカーが発表している機能性で最初は選ばれたとしても、体感がなかったら次のヨーグルトに変えられる方も少なくないです。その方の腸に合うかっていうところが一番大事なんだろうなと思いますね。
ヨーグルトを続けたければ
自分の腸に聞くといい
──
なるほど、最強のヨーグルトがあるわけではなく「私の腸にはこれが合う」が見つかるといいんですね。そして、これだけ個性的な商品だと味の調整難しかったんでしょうね、と思います。酸味もありますしね。
敷田:
やはり酸味と、大豆の味自体は消したくないんですけれど、臭みは消したい。それが難しいんですよね。フジッコとしては豆の味を消すんじゃなくて、残しつつ、美味しく召し上がっていただくのを目指してましたので。風味を分解した時に、嫌な雑味だけが出ないようにする、そこのバランス。
──
大豆くさいのは嫌だけど、大豆の味は消したくない。一休さんが挑むような問題ですね。できた時にみんなは「できた!」ってなったんですか。
敷田:
そうですね。そのやり方を発見してくれたメンバーにも「ありがとう~!」ってなりましたね(笑)。最近の新商品の中で、一番開発に関わったメンバーの数が多いのがこれなんです。歴代何人もの担当者が試作にチャレンジしてくれてて、ずっとやり続けてきた蓄積があったうえで、ちょっと新しい視点が入った時に実現した。そんな流れがありました。
──
すごい…SASUKEみたいな世界ですね(笑)。レジェンドたちが達成者を褒め称えるあれだ。そしてそんな難しさを聞いたあとで食べると、また味わいがいが!(笑) おもしろいな~。味もおもしろいし、エピソードもおもしろい。
7年かけて開発できたときには
先人たちにも感謝の念があるそうだ
──
個人的に年齢が上の方になってきて、「これ健康によさそう」という感覚がそのまま美味しさや満足度につながってる気がするんです。世間的に年齢層上がってるから味もこういうのは喜ばれるでしょうね。
敷田:
ここにある商品はそういった考え方に近いですね。「健康にいい」ということが「美味しい」に結びついていくというか、自分にとって美味しいものだという感覚になっていく。そういった考えがベースにあるとも言えると思います。
──
そうですよね。そっか~、これ大豆の味なんですよね。
敷田:
初めて手に取るときに「これめちゃくちゃ美味しそうだ!」と考える方は多数派ではないかもしれないですけど、でも「今となってはめちゃくちゃ好き」という方は多いと思います。それはやっぱり豆というものがそういうものなんじゃないでしょうか。
──
豆というものの深さ! 豆のプロであるフジッコさんから聞けて今日はよかったです(笑)。
後日談になりますが、小腹が空いたのでスーパーでなにかパンかおにぎりか買って帰ろうと思ったんです。でもたまたまヨーグルトの前を通りがかったらこの『まるごとSOY(略)』があったんですよね。あれ? もしかしてこれでいいんじゃない?
こんなことやったことないなと思いながら、スプーンもらってそのまま400gを一気に食べました。豆腐一丁ちょっと食べるようなもので、豆腐だと食べられないですけど、これだとなにもつけずでもなんだかおいしいんですよね。外出先のヘルシーごはんとしてアリでした(見た目にはナシでしたが)。
そして一回試してほしい。めんつゆや天かす、わさびやアボカドといったおかずとしての『まるごとSOYカスピ海ヨーグルト』を。
あのね、もういいかげん、私、飽きてるんですよ。スーパーまるごとに飽きてるし、コンビニまるごとに飽きてる。だからこそ「話をきいたうえでたべるおもしろさ」に乗り出してるわけですが……いや、まだまだ新しい体験はあるのかと驚きました。ヨーグルトがおかずに!
こりかたまった概念がグラッとゆらぐ味のコペルニクス的転回。ぜひとも味わってほしい。そして火を囲んで語り合い夜を明かしましょう。大豆のヨーグルトについて。その時もう私たちは、同じ29ttaの民です。
取材協力:フジッコ株式会社
フジッコ株式会社
とろ~りクリーミー! 「まるごとSOYカスピ海ヨーグルト」